据置の「蓄電池」と持ち運べる「ポータブル電源」は似ているようで役割が違います。費用と工事、停電時の使い勝手をやさしく比べました。
目次
基本の違い 仕組みと役割
蓄電池=据置で家まるごとバックアップ
家庭用蓄電池は屋外に設置する大容量のバッテリーシステムです。容量[ためられる電気の量]は通常4-16kWh程度で、家全体の電気をまかなえます。分電盤[家の電気を各部屋に分ける装置]に接続するため、停電時も普段通りの生活を維持できる特徴があります。
蓄電池のメリット
- 大容量で長時間の停電に対応
- 家全体の電気をバックアップ
- 太陽光発電との連携が高効率
- 自動切替で手間なし
ポータブル電源=持ち運びで点のバックアップ
ポータブル電源は持ち運べるバッテリーで、容量は0.2-3kWh程度です。コンセントに差し込んで使うため、必要な家電だけを選んで動かします。工事不要で導入でき、アウトドアや車中泊でも活用できる柔軟性が魅力です。
ポータブル電源のメリット
- 工事不要ですぐ使える
- 持ち運びで用途が広がる
- 初期費用を抑えられる
- 必要に応じて買い増し可能
お金の違い 初期費用と回収年数
初期費用の目安と価格帯
2025年7月の価格調査によると、初期費用には大きな差があります。
種類 | 容量 | 初期費用 | 工事費 | 合計 |
---|---|---|---|---|
ポータブル電源(小型) | 0.5kWh | 5-10万円 | 0円 | 5-10万円 |
ポータブル電源(大型) | 2-3kWh | 20-40万円 | 0円 | 20-40万円 |
家庭用蓄電池 | 6-10kWh | 80-200万円 | 20-50万円 | 100-250万円 |
電気代請求書の単価で回収年数を試算
電気代の従量料金が30円/kWhの家庭を例に、毎日1kWh節約した場合の回収年数を計算します。
製品 | 初期投資 | 年間節約額 | 回収年数 |
---|---|---|---|
ポータブル電源 0.5kWh | 7万円 | 5,475円 | 12.8年 |
ポータブル電源 2kWh | 30万円 | 21,900円 | 13.7年 |
家庭用蓄電池 8kWh | 150万円 | 87,600円 | 17.1年 |
停電時の違い 家電がどれだけ動くか
Wi-Fi・照明・冷蔵庫の連続稼働時間
実際の停電を想定した稼働テストの結果です。消費電力の実測値から計算しています。
家電 | 消費電力 | ポータブル電源 1kWh | 家庭用蓄電池 8kWh |
---|---|---|---|
Wi-Fiルーター | 15W | 60時間 | 480時間(20日) |
LED照明(5個) | 50W | 18時間 | 144時間(6日) |
小型冷蔵庫 | 90W平均 | 10時間 | 80時間(3.3日) |
スマホ充電 | 18W | 50回分 | 400回分 |
電子レンジやドライヤーは動く?
高出力家電の対応は定格出力[連続で出せる電気の力]で決まります。
電子レンジ(1200W)やドライヤー(1000W以上)は、多くのポータブル電源では使用できません。定格出力が2000W以上の上位機種が必要です。
家電 | 必要な定格出力 | ポータブル電源での対応 | 蓄電池での対応 |
---|---|---|---|
電子レンジ | 1200W | 上位機種のみ可 | 問題なし |
ドライヤー | 1000-1500W | 上位機種のみ可 | 問題なし |
エアコン | 500-1500W | 小型機種のみ可 | 制限あり |
IH調理器 | 1400-3000W | 対応困難 | 制限あり |
太陽光との相性 昼夜の使い分け
昼の充電・夜の放電シナリオ
太陽光発電がある家庭では、昼間に発電した余剰電力を蓄電し、夜間に使用する運用が基本です。売電価格の下落により、自家消費の価値が高まっています。
ポータブル電源+折り畳みパネルの現実
ポータブル電源でも太陽光充電は可能ですが、充電時間と発電量に課題があります。
発電条件 | 100Wパネル | 200Wパネル | 屋根設置5kW |
---|---|---|---|
晴天時(3時間) | 240Wh | 480Wh | 12kWh |
1kWh充電に必要な時間 | 12.5時間 | 6.25時間 | 1時間 |
設置場所 | ベランダ・庭 | ベランダ・庭 | 屋根 |
家の条件で選ぶチェックリスト
持ち運び重視/停電に強く/初期費用を抑える
持ち運び重視
- キャンプや車中泊で使いたい
- 賃貸住宅で工事できない
- 災害時の避難先で使いたい
- 複数の場所で使い回したい
停電に強く
- 家全体をバックアップしたい
- 長時間停電に備えたい
- 太陽光発電を最大活用したい
- 自動切替で手間を省きたい
初期費用を抑える
- 最低限の備えから始めたい
- 効果を確認してから拡張したい
- 複数台で段階的に増設したい
- 用途別に使い分けたい
まとめ わが家に合うのはどっち?
選択のポイント
蓄電池とポータブル電源は、どちらも電気を蓄える道具ですが、役割と適用場面が大きく異なります。蓄電池は「家まるごとの安心」を提供し、ポータブル電源は「必要な時に必要な分だけ」の柔軟性を提供します。
蓄電池を選ぶべきケース
- 太陽光発電システムを設置済み
- 家全体の停電対策が必要
- 長期の電気代削減を重視
- 工事可能な持ち家
ポータブル電源を選ぶべきケース
- 工事なしで導入したい
- アウトドアでも使いたい
- 初期費用を抑えたい
- 賃貸住宅に住んでいる
どちらを選ぶにしても、容量と定格出力のバランス、充電時間、保証内容を確認することが大切です。家庭の電気使用パターンと予算に合わせて、段階的に導入することをお勧めします。
参考文献
- 家庭用蓄電システム導入ガイド – 経済産業省資源エネルギー庁
- 固定価格買取制度情報公開用ウェブサイト – 資源エネルギー庁
- リチウムイオンバッテリーの安全な使い方 – 製品評価技術基盤機構
- 電気料金プラン – 東京電力エナジーパートナー
- 災害時活用可能な家庭用蓄電システム導入促進事業費補助金 – 環境共創イニシアチブ
- 家庭用蓄電システムガイドブック – 日本電機工業会
- 蓄電池システムの安全確保について – 経済産業省
- 停電時の家庭防災マニュアル – 内閣府防災情報
- 太陽光発電協会 住宅用太陽光発電システムガイドライン – 太陽光発電協会
- 電気料金の算定方法について – 資源エネルギー庁
- 気象庁ナウキャスト(雷・竜巻) – 気象庁
- リコール情報サイト – 消費者庁